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土屋 勝彦; 木津 要; 高橋 弘行*; 安藤 俊就*; 松川 誠; 玉井 広史
IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 16(2), p.922 - 925, 2006/06
被引用回数:1 パーセンタイル:11.94(Engineering, Electrical & Electronic)トカマク国内重点化装置における超伝導トロイダル磁場(TF)コイルの支持構造の最適化を進めている。プラズマ運転シナリオ上、最大の電磁力が加わると考えられる条件での応力や変位を、有限要素法解析により評価した。この評価に基づき、最も変位の低減に有効なコイルケースやシアパネルの配置を検討した結果、アウトボード側斜め下部において、コイルケースやシアパネル構造の増強を行えば、最も効率的に変位を抑えられることを見いだした。また、ボルトやキーの配置及び本数を調整して支持構造の簡素化を図り、構造物の応力/変位が設計基準を満たしていることを確認した。さらに、これまで未評価であった超伝導導体によって構成される巻線部に生じる歪みや、インボード部で巻線が受ける横圧縮力について、最大の電磁力荷重条件において評価した。その結果、導体長手方向の歪みは、熱処理時にコンジットから受ける歪みを緩和する伸び方向が顕著であり、導体の臨界電流劣化に寄与しないことがわかった。また、横圧縮力については、最大経験磁場の箇所で、ニオブアルミ素線の臨界電流値の劣化が始まると報告されている60MPa以下であった。このことから、現設計の支持構造は想定している導体性能に悪影響を及ぼさないことが確認できた。
木津 要; 土屋 勝彦; 島田 勝弘; 安藤 俊就*; 菱沼 良光*; 小泉 徳潔; 松川 誠; 三浦 友史*; 西村 新*; 奥野 清; et al.
IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 16(2), p.872 - 875, 2006/06
被引用回数:1 パーセンタイル:11.94(Engineering, Electrical & Electronic)NbAl素線の臨界電流値(Ic)は歪みにより減少する。ケーブル・イン・コンジット導体(CICC)中の素線には熱歪みと曲げ歪みが加わる。しかしながら、JT-60定常高ベータ化計画のR&Dにおいてリアクト・アンド・ワインド法によって製作されたNbAl-D型コイルにおいては、0.4%の曲げ歪みが印加されてもIcは減少しないことが見いだされている。これは、素線の曲げ歪みがケーブル効果により緩和したことを示唆している。CICCのIcに対する曲げの効果を評価するためには、素線に対する引張り・圧縮歪みの効果と、CICC中の素線の歪み緩和効果を調査する必要がある。そこで本研究では、素線及びCICCサンプルに引張り・圧縮歪みを印加できる装置を開発した。サンプルはベリリウム銅製のねじりコイルばね形状のサンプルホルダー表面に取り付けられ、ホルダーをねじることで歪みが印加される。CICCサンプルを取り付け可能とするために82mm径のサンプルホルダーを製作した。NbAl素線サンプルのIcを外部磁場612T,歪み-0.86%+0.18%の範囲で測定することに成功した。外部磁場11T,歪み-0.86%でのIcは歪み0%の65%に減少することが見いだされた。
三浦 友史; 木津 要; 土屋 勝彦; 礒野 高明; 松井 邦浩; 逆井 章; 石田 真一; 松川 誠; 安藤 俊就
IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 12(1), p.611 - 614, 2002/03
被引用回数:8 パーセンタイル:45.28(Engineering, Electrical & Electronic)JT-60の超伝導ポロイダル磁場(PF)コイルのために、20kA-7.4T級NbSn導体と20kA-5.0T級NbTi導体を開発した。PFコイルはパルス運転されるため、交流損失の低減が重要な検討項目である。2導体にはともにCrめっきを適用し、結合時定数の設計値は50msであるが、NbTi導体では、コスト低減を狙ってSnAgめっきの適用も検討した。短尺実寸サンプルの交流損失を測定した結果、NbSn導体の結合時定数は、導体熱処理時に素線間のCrめっきが焼結したため、設計値の5倍の大きさであった。曲げ歪を印加し焼結部をはがした後、交流損失を再測定する予定である。NbTi導体では、Crめっきが48msであり適用可能であることがわかった。一方、SnAgめっきは127msで、撚線後の効果的な酸化処理法をさらに検討する必要があることがわかった。臨界電流の測定結果についても報告する予定である。
石川 法人; 末吉 哲郎*; 岩瀬 彰宏; 知見 康弘; 藤吉 孝則*; 宮原 邦幸*; 木須 隆暢*
Physica C, 357-360(Part.1), p.505 - 508, 2001/09
レーザーアブレーション法により作ったYBaCuO薄膜に、200MeV Auイオンを-45°の方向から照射し、傾いた柱状欠陥を試料中に導入した。照射前後に臨界電流密度の磁場角度依存性をその場測定し、さらにその磁場依存性を調べた。その結果、1~3Tの磁場領域においては磁束1本1本がそれぞれ柱状欠陥にピニングされるという描像よりむしろ磁束のbundleが柱状欠陥によってピニングされていると解釈した方がよいと結論づけることができる。
笹瀬 雅人
放射線化学, 2001(72), p.42 - 45, 2001/08
高温超伝導体の材料応用においては、超伝導転移温度(T)ともに臨界電流密度(J)の向上が不可欠である。しかしながら従来までの高温超伝導体においては、電流を流すことにより磁束量子が動き、超伝導特性が急激に低下する問題点を抱えていた。これに対し著者は高速の重イオンを超伝導体に照射することにより磁束を固定化し、Jを向上させることに成功した。本稿では数MeV~数百MeVの広範囲なエネルギー範囲でイオン照射を行い、種々の照射条件における欠陥の形状、損傷の形態を高分解能透過型電子顕微鏡を用いて観察し、電子阻止能(S)及びイオン速度との関係等について検討を行った結果を中心に紹介した。本研究により照射イオンの阻止能(S)の増加とともに円柱状欠陥の直径も増加し磁束固定化の効果が高くなること、またイオン速度の極端に高い領域では欠陥形成とイオンが固体中を通過する時間スケールが近づくためにSだけでなく欠陥形成に与えるイオン速度の効果が無視できないことを明らかにした。
小泉 徳潔; 高橋 良和; 中嶋 秀夫; 土屋 佳則; 松井 邦浩; 布谷 嘉彦; 安藤 俊就; 檜山 忠雄; 加藤 崇; 礒野 高明; et al.
低温工学, 36(8), p.478 - 485, 2001/08
ITER-EDAの一環として、ステンレス鋼製コンジットを使用したNbAl導体を開発した。本導体の臨界電流性能を短尺の導体サンプルを用いて評価した。その結果、本導体が予想どおりの臨界電流性能を満足することが確認できた。また、本導体の臨界電流値は、運転条件である13T,4.5Kで90kA以上であることがわかり、定格電流値46kAに対して十分な裕度をもつことも確認できた。ただし、本導体の熱処理(NbAl生成のため)後に大きな熱応力が残留することも見いだした。
岡安 悟; 朝岡 秀人
Physica C, 317-318, p.633 - 636, 1999/05
被引用回数:4 パーセンタイル:28.64(Physics, Applied)ある温度以上の領域では、一度消失したように見えた臨界電流密度Jcが再びさらに高い磁場で復活するという「リエントラント」な現象を、双晶のないYBCO超伝導体において見出した。このリエントラントを示す境界線が相転移かどうか、また相転移であるならば、何次のものであるのかを調べるため、交流磁化率の非線型な応答を調べることで研究した。その結果、この境界線は、既に1次相転移線として知られている磁束の液体~固体の融解曲線と極めて良く似た性質を示すことがわかった。このことは問題の境界線が一次の相転移線を示す直接の証拠ではないものの、その可能性を強く示唆するものである。
土屋 良重*; 花栗 哲郎*; 安田 英彰*; 前田 京剛*; 笹瀬 雅人; 北條 喜一; Steel, D. G.*; Lee, J. U.*; Hofman, D. J.*
Physical Review B, 59(17), p.11568 - 11574, 1999/00
被引用回数:8 パーセンタイル:45.63(Materials Science, Multidisciplinary)円柱状欠陥を含むBiSrCaCuOyの磁束液体面における異常な振る舞いをジョセフソンプラズマ共鳴と直流磁化を用いて研究した。その結果、磁束液体相の境界は磁場温度平面上ではほとんど水平、つまり温度依存性をもたないことがわかった。これは磁束液体相のカップリング相転移が磁場によって引き起こされる現象であることを示唆している。また、カップリング磁場B直下の磁場Bにおいて、面内の臨界電流の増大と面間位相コヒーレンスの急激な減少が同時に起こっていること、B,Bといった異常の起こる磁場はBよりもかなり低いことなどが観察された。これらの点は円柱状欠陥のTEM観察結果から得られた欠陥分布の不均一性が関係していると思われる。
朝岡 秀人; 数又 幸生*; 武居 文彦*; 野田 健治
Physica C, 279(3-4), p.246 - 252, 1997/00
被引用回数:2 パーセンタイル:20.22(Physics, Applied)フラックス法により、仕込みYBaCuO:フラックス比の割合を変化させ、YBaCuO結晶育成を行った。その結果、仕込みYBaCuO:フラックス比におけるフラックスの割合が減少するにつれてYBaCuO結晶中の空孔が増加し、これにより臨界電流密度Jcが高くなるという結果を得た。従来、YBaCuO結晶におけるピンニングセンターとして、酸素欠損、双晶面、粒界、欠陥、YBaCuO粒子等が研究されているが空孔に注目した研究はほとんど行われていない。
岡安 悟; 数又 幸生*
Proc. of 9th Int. Symp. on Superconductivity, 0, p.507 - 510, 1997/00
一連の長時間緩和磁化測定から30MeVのプロトン照射をしたQMG-YBCOの試料と未照射の同試料とで活性化エネルギーがどう変化するかを比較した。照射により核衝突で欠陥が試料中に導入されるとすると、その平均的大きさは直径10程度となる。また照射量110p/cmでは20ppm程度の濃度で欠陥が導入されたことになる。欠陥の濃度はあまり大きくないが、臨界電流密度及び磁束の活性化エネルギーは、20~70Kの温度範囲、~10A/cmの電流値で著しい改善がみられた。Maleyの式を用いて活性化エネルギーのJ依存性を調べると、照射、未照射どちらの場合もJのべきで表わされる。未照射の試料では全てのJの領域でJの依存性であるが、プロトン照射した試料ではJ~310A/cmのあたりを境にJのべきが-2.5(高いJの領域)から-0.8(低いJの領域)へと変化する。
西嵜 照和*; 小野寺 康明*; 内藤 智之*; 朝岡 秀人; 武居 文彦*; 小林 典男*
Czechoslovak Journal of Physics, 46(SUPPL.S3), p.1595 - 1596, 1996/00
酸化物超伝導体YBaCuO単結晶を用い、c軸方向からの磁場と温度を変化させ磁気特性の測定を行った。磁束格子メルティング曲線Hm(T)の直下で臨界電流密度Jのシャープなピークが観測された。このピークは不可逆曲線Hirr(T)とHm(T)が一致するとき最も大きく見られる。ピーク以下の温度に関してJ(1-T),m=5.5で示されコレクティブピンニング理論とのよい一致を示した。
岡安 悟; 数又 幸生*
Czechoslovak Journal of Physics, 46(SUPPL.S3), p.1645 - 1646, 1996/00
OMG法で作製した酸化物超伝導体YBCOに16MeVのプロトンを照射し、磁束のピンニング特性の改善について調べた。磁化の長時間緩和の測定から磁束の活性化エネルギーを求めたところ、U(J/Jc)[1-(T/Tx)]・Hの形で表わされることがわかった。照射量に対する変化は510ions/cmまでは活性化エネルギー及び臨界電流密度は増大し、ピン止め特性は改善されるが、110まで照射すると、それらの変化は小さくなる。また活性化エネルギーの温度依存関数が、Jのべきから指数関数的に変化することを見い出した。
朝岡 秀人; 数又 幸生*; 武居 文彦*; 野田 健治
Physica C, 268(1-2), p.14 - 20, 1996/00
酸化物超伝導体YBaCuOの結晶成長において、液相量が十分に存在する固液共存状態から育成した高品質のYBaCuO結晶を不活性ガス中でアニーリングし、再び正方晶に相転移させた後a(b)軸方向から加圧しながら酸素を導入した結果、同一YBaCuO結晶内に双晶領域と完全に双晶境界のない領域を得ることができた。双晶領域と無双晶領域とを比較し、双晶領域の磁化率-温度曲線におけるマイスナー分率は相対的に減少すること、磁化のヒステリシス曲線において5~20Kでは双晶領域のMは減少し、60~80Kでは増加することを明らかにした。つまり高磁場中の低温域では双晶境界に沿った量子化磁束の結晶外へのはきだしが行われていたが、温度の上昇と共に量子化磁束の束としての運動が主になり双晶境界にそったはきだしが困難となった結果、逆に双晶境界が量子化磁束の運動を阻害する方向に作用したものと考えられる。
石川 法人; 岩瀬 彰宏; 岩田 忠夫; 前田 裕司; 鶴 浩二*; 道上 修*
Superconductors, Surfaces and Superlattices (Trans. of Materials Research Soc. Jpn., Vol. 19A), 0, p.537 - 540, 1994/00
本研究では、EuBaCuO薄膜について、1MeVのHeイオンの照射をしたときの、不可逆曲線及び臨界電流密度といったピニング特性のイオン照射効果を調べた。1MeVのHeイオンをこの物質に照射すると、点状欠陥が生成されると考えられる。照射後、不可逆曲線は低温側に移動し、臨界電流密度の減少が観測され、照射によるピニング特性が劣化していることが判った。また、ピニング特性の劣化は、10cmのオーダーの低照射量領域から起きていることが判った。
白石 健介*
Advances in Superconductivity V, p.501 - 504, 1993/00
結晶したBiPbSrCaCuOペレットから切り出した試料に、Coからの線または3MeVの電子線を2MRあるいは1.810mまで照射し、1.0Tまでの磁場中で20Kから100Kまでの範囲で温度の関数として、直流四端子法により臨界電流密度を測定した。ガンマ線を2MRまで照射すると、65K以下の温度で臨界温度は低下し、照射の効果は低温ほど著しい。ガンマ線の照射を続けると臨界電流密度は低下し、照射効果が認められる最高の温度も高温側に移動する。これに対して、6.010mまで電子線を照射すると、外部磁場の有無にかかわらず、約50K以下の温度で臨界電流密度は上昇する。照射量が1.810mになると、0.32Tで測定した臨界電流密度は約50K以下の温度では、照射前の値より小さくなる。なお、磁場なしおよび0.04Tで測定した臨界電流密度は、1.810mの電子線照射後も照射前の値に比べて高い状態を保っている。
白石 健介; 坂本 宏*; 弥野 光一*; 乙黒 靖男*
Japanese Journal of Applied Physics, 31(12A), p.L1675 - L1678, 1992/12
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)焼結したBiPbSrCaCuOから切り出した試料に、3MeVの電子線を8.910m・Sの線量率で、1.810mまで室温で照射し、直流の四端子法で、0.64Tまでの磁場中の臨界電流密度を温度の関数として測定した。磁場なしで測定した臨界電流密度は、45K以下の温度で電子線照射によって上昇する。この照射の効果は測定温度が低いほど著しい。また、磁場中で測定した臨界電流密度も、6.010mまでの電子線照射によって約50K以下の温度で上昇する。この電子線照射の効果は測定温度が低いほど、また0.16Tまでの磁場中では磁場が弱いほど著しい。電子線照射が1.810mになると0.16Tで測定した臨界電流密度は約50K以下の温度では照射前の値より小さくなる。このような電子線照射による臨界電流密度の変化は、結晶粒内の照射欠陥のほか、結晶粒界に生じたアモルファス層が磁束線のピン止め点として作用することによる。
白石 健介*; 坂本 宏*; 弥野 光一*; 乙黒 靖男*
Japanese Journal of Applied Physics, 31(8A), p.L1037 - L1040, 1992/08
被引用回数:5 パーセンタイル:32.8(Physics, Applied)結晶したBiPbSrCaCuOに、2.4810m・sの線束密度で、3MeVの電子線を2.010mまで室温で照射し、直流四端子法によって臨界電流密度を温度の関数として測定した。外部磁場をかけないと、1.010mまで照射すると、65K以下の臨界電流密度が上昇する。この電子線照射の効果は測定温度が低いほど顕著である。この照射試料に0.04Tの外部磁場をかけて臨界電流密度を測定すると、25K以下の温度で僅かに臨界電流密度は上昇するが、0.8Tあるいはそれ以上の磁場中での臨界電流密度は、照射前の値に比べて小さくなる。電子線の照射量が2.010mになると外部磁場の有無にかかわらず、比較的低温度で測定した臨界電流密度は低下する。これらの電子線照射効果は、照射欠陥による磁束線のピン止め点の導入と結晶粒界などの界面にアモルファス層が生成、成長する過程が競合して起こることによるものであると考えられる。
白石 健介; 坂本 宏*; 弥野 光一*; 乙黒 靖男*
Japanese Journal of Applied Physics, 31(3A), p.L227 - L230, 1992/03
被引用回数:3 パーセンタイル:22.49(Physics, Applied)焼結したBiPbSrCaCuOペレットから切り出した試験片に、Coからの線を2.0MR・hの線量率で、順次24MRまで室温で照射し、直接通電法によって臨界電流密度を温度の関数として測定した。外部から磁場をかけないで測定した臨界電流密度は、2MRのガンマ線を照射すると、65K以下の温度で、照射前の値に比べて低下する。このガンマ線照射による臨界電流密度の低下は、測定温度が低いほど著しい。これに対して、1.0Tまでの磁場中で測定した臨界電流密度は、2MRのガンマ線によって、上昇する。ガンマ線の照射を続けると、外部磁場の有無にかかわらず、臨界電流密度は次第に低下し、24MRの照射後は外部磁場をかけない状態では、77K以下の温度で照射効果が認められる。これらのガンマ線照射効果は、結晶子の界面に、超電導ではない、アモルファス層が生成・成長することによるものであると考えられる。
白石 健介; 坂本 宏*; 弥野 光一*; 乙黒 靖男*
Japanese Journal of Applied Physics, 31(1A-B), p.L17 - L20, 1992/01
被引用回数:3 パーセンタイル:22.49(Physics, Applied)焼結したBiPbSrCaCuOペレットの臨界電流密度を直接通電法によって、90Kから20Kの範囲の温度の関数として、1.0Tまでの磁場中で測定した。零磁場では、77Kで1.9MA・mであった臨界電流密度は、温度の降下に対してほぼ直接的に増加し、50Kで9.4MA・mになる。さらに温度を下げると臨界電流密度の上昇の割合はやや低下するが、20Kでは11.8M・mになる。温度を20Kに保って、1.0Tの磁場中で測定した後、この温度で磁場をかけないで測定すると臨界電流密度は8.6MA・mに低下する。零磁場で温度を上げていくと、低温で1.0Tの磁場をかけた効果は徐々に回復し、70Kでほぼ元の値になる。なお、70K以上の温度で磁場をかけて臨界電流密度を測定しても、それは零磁場で測定する臨界電流密度に影響を及ぼさない。
白石 健介*
応用物理, 61(7), p.722 - 725, 1992/00
電子線あるいはガンマ線照射による、電気抵抗率および臨界電流密度の変化に関する実験結果を基に、YBaCuOおよび(Bi,Pb)SrCaCuOの放射線照射効果について考察した。酸化物高温超電導材料の粒子線照射による、超電導転移温度および臨界電流密度の変化は、格子原子のはじき出しによるものとして理解できる。なお、非常にエネルギーの高いイオン照射では、熱スパイクによって生じる円柱状の非超電導相が、これらの超電導特性の変化に寄与する。ガンマ線の照射や荷電粒子と格子原子との電子的な相互作用によって、結晶粒界などの界面に生成するアモルファス層は、電気抵抗法で測定する臨界電流密度を低下させる。さらに、YBaCuOに比べて、(BiPb)SrCaCuOの方が、放射線照射に対する感受性が高いのは、アモルファス層が生成、成長し易いことによると考えられる。